■トルコ共和国における資料調査

 [期間] 2009年1月25日(日)〜2月23日(月)
 [国名] トルコ共和国
 [出張者] 清水保尚(東京外国語大学オープン・アカデミー講師)

[概要]
 報告者は、2009年1月25日から2月23日までトルコ共和国のイスタンブル市に所在する研究機関で資料調査及び収集をおこなった。調査機関は総理府オスマン文書館とスレイマニイェ図書館である。この調査は、文部科学省「人文学及び社会科学における共同研究拠点の整備の推進事業」の委託費による「イスラーム地域研究」にかかわる共同研究課題の公募事業の一環で、高松洋一を研究代表者とする「イスラーム圏におけるイラン式簿記術の展開:オスマン朝治下において作成された帳簿群を中心として」という研究課題を遂行するためのものである。

 資料の調査と収集の上で、スレイマニイェ図書館では、財務術と簿記術に関するペルシア語とオスマン語の写本を中心に収集した。総理府オスマン文書館では、帳簿の具体的な実例を知るため、租税台帳、会計簿、日々出納簿といった帳簿を中心に資料の収集をおこなった。このほか研究を進める上で必要な出版書籍を購入した。

 高松の研究課題の趣旨説明、研究構成員の渡部良子によるペルシア語財務術・簿記術指南書に関する研究報告に基づき、スレイマニイェ図書館では、オスマン朝の簿記術に影響を及ぼしたと考えられるペルシア語の財務術・簿記術指南書の写本と、そうした作品の影響下で著されたと考えられる、オスマン朝治下の15-16世紀に記された同ジャンルの写本とを収集した。前者の代表例は、アブドッラー・ブン・ムハンマド・ブン・キヤー・マーザンダラーニー、ファラク・アラー・タブリーズィーの作品である。後者としては、オスマン朝治下でハリル・ブン・イブラヒムが著したペルシア語作品とそのオスマン語訳、ムヒッディン・ムハンメド・ブン・ハーッジ・アトマジャの作品などである。

 総理府オスマン文書館では、報告者の問題関心に則し、シリアのアレッポとその周辺域と関わる租税台帳、会計簿、日々出納簿を中心に収集した。本報告者の専門である徴税請負に関しては、その方法を介した税の納付を知る上で重要なアレッポの日々出納簿、各都市と村の税収の割当先を記す租税台帳を収集した。租税台帳は県単位で作成されおり、アレッポ財政管区全体の情報を知るには不十分であるので、アレッポ県に加え、ビレジキ県、ハマ県、ホムス県などに関わる台帳を収集した。こうした資料に加え、地域における富の還流を考える上で重要なメッカ・メディナの両聖都に金品を送るため設定されたワクフ(寄進財)に関する、アレッポの会計簿を可能な限り網羅的に収集した。また税収の一部は俸給や年金といった形で使途が特定化されおり、このように各個人に税収の一部を受取る権利を承認した文書の調査を実施した。

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