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(Hinz:43; A:29b<32b>)
第6章
諸規則
――そして本章中に数節――
[3]節
34 「残余(bāqī)」35と「超過(ziyāda)」36。様々な状況での用法とその性質37
ある徴税吏(‘āmil)の[扱う]収入(jam‘)と支出(kharj) 38が書かれるとき、収支が同額か否かということを忘れてはならない。もし同額でないなら、疑いなく支出が多すぎるか、少なすぎるのである。 [用例1:会計で収支が一致する場合の書き方] 収入が支出と同額であれば、[収入の]「基本額(aṣl)」[のマッド]に対応するように、「その全額を支出(al-maṣrūf
bi-tamām-hi)」あるいは「支出(maṣrūf)」と長く伸ばして書く。そしてその下、総額の位置に「全額(tamāman)」と書く。今[以下に]示されるように。神のご助力により 39。
基本額────────────────────────────────────────────────────────────
バスラの諸税の 40
サドル・ハージャ・フマーム・アッディーン・アッシーラーズィーの責任において 満1年分 735年恩恵あるムハッラム月朔日 現行通貨で 300,000 d.n
大内訳(min dhālika-yi a‘lā)
支出──────────────────────────────────────────────────────────────
諸費用に 300,000 d.nから 全額
(A:30a<33a>)
内々訳42
通常経費────────────────────────────────────────────────
その州における 41 150,000
d.n
(Hinz:44)
給付金────────────────
学生のために
50,000 d.n
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年俸─────────────────
従僕達ために
20,000 d.n
|
生活費────────────────
古参の下僕達のために
20,000 d.n
|
経費─────────────────
使者のための
40,000 d.n
|
扶持─────────────────
彼らの長はマウラナー・アリー・アルハマダーニー
20,000 d.n
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内々訳の対
特別経費────────────────────────────────────────────────
150,000 d.n
宮廷費───────────────────────────
60,000 d.n
|
預託金───────────────────────────
財庫の代官達への
90,000 d.n
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[用例2:支出が収入より多く、超過がある場合の書式]
支出が収入より多い場合は、疑いなく徴税吏がなんらかの費用を超過して支払っているのである。そのような場合は常に、書記は「基本額」に対応するように「これが正しかった(ṣaḥḥa
dhālika)」43と長く伸ばして書かなければならない。今、説明されるようにである。
(A: 30b<33b>)
基本額─────────────────────────────────────────────────────────────
(Hinz: 45) バスラの諸税 44の
すべて(jam‘an)、サドル・ハージャ・フマーム・アッディーン・アッシーラーズィーに[任された] 45、満1年分、735年恩恵あるムハッラム月朔日
現行通貨で 300,000 d.n.
大内訳
これが正しかった──────────────────────────────────────────────────────
諸費用において 320,000 d.n
大内々訳
通常経費────────────────────────────────────────────────
その州における 150,000
d.n
給付金────────────────
信徒の長フサインの殉教地46のサイイド達のために
40,000 d.n
|
年俸──────────────────
幸運な(?)従僕達47のために
60,000 d.n
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生活費─────────────────
古参の下僕達のために
50,000 d.n
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内々訳の対
特別経費────────────────────────────────────────────────
170,000 d.n
ハージャ──────────────────────────
イマード宮廷費担当官(garakyarāqchī)48
120,000 d.n
|
アミール──────────────────────────
アリー糧食担当官(bukā’ul)49
50,000 d.n
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(Hinz:46, A:31a<34a>) 冒頭の内訳の対50
超過───────────────────────────────────────────────────────────────
基本額における 20,000 d.n
[用例3:超過額をなんらかの財源で補填する場合の書式]
超過額を調べる方法は、次の通りである。支出を収入の額(wujūh)から差し引くのと同じように、この場合は収入を支出から差し引く。そうして残ったものが超過である。超過額を補填(‘iwaḍ)したいときは、「これが充てられた(wujjiha
dhālika)」を、「超過」と同じ長さに伸ばして書く。以下の通り
51。
決定(ta‘yīn)
これが充てられた─────────────────────────────────────────────────────
[7]36年に当たる翌年 52の
前述のバスラの税から 53執行される(mujrā)
20,000 d.n 全額
[用例4:収入が支出より多く、徴税吏のもとに残余がある場合の書式]
もし収入が支出より多いなら、疑いなく、徴税吏のもとになんらかのものが残っていることになる。「基本額」に対応するように、「これから差し引かれた」と長く伸ばして書かれねばならない54。経費をすべて記載したら、収入から[それを]差し引き、「残余」の語を長く伸ばして書く。そして徴税吏のもとに(A:
31b<34b>)残っているものを、以下に述べるように記載する。
基本額─────────────────────────────────────────────────────────────
バスラの諸税の 55、サドル・ハージャ・フマーム・アッディーン・アッシーラーズィーの責任において
834年ムハッラム月朔日 56
現行通貨で 300,000 d.n (Hinz: 47)
内訳
これから差し引かれた──────────────────────────────────────────────────
240,000 d.n
内々訳
通常経費────────────────────────────────────────────────
150,000
d.n
給付金────────────────
学生のために
40,000 d.n
|
俸給──────────────────
従僕達のために
70,000 d.n
|
生活費─────────────────
古参の下僕達のために
40,000 d.n
|
内々訳の対
特別経費────────────────────────────────────────────────
90,000 d.n
ハージャ─────────────────────────
イマード・アッディーン 宮廷費担当官
60,000 d.n
|
アミール─────────────────────────
アリー糧食担当官
30,000 d.n
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(A:32a<35a>) 内訳の対
残余─────────────────────────────────────────────────────────────
徴税吏のもとに(‘inda al-‘āmil) 60,000 d.n
[一部の記述の欠落]57
[用例5:現金・現物の2種があり、一方には残余、一方に超過がある場合の書式]
(Hinz:48) しばしば、1つの会計において、現金と品物などの2種のものが一緒になっており、徴税吏にとって、一方の額面(wajh)には残余が、別の額面には超過があるという場合がある。[その場合、]残余の箇所に「残余と超過」の語を書き、「彼(徴税吏)が返すべき残余(al-bāqī
‘alay-hi)」の額を「残余」のマッドの下に、「彼が貸している超過(al-ziyāda la-hu)」58の額を「超過」のマッドの下に書く。次に説明するように。
基本額─────────────────────────────────────────────────────────────
バスラの諸税の 59
サドル・ハージャ・ウバイド・アルバグダーディーの責任において 742年サファル月朔日
現行通貨で 300,000 d.n
穀物(ghalla)で 30,000ウィクル
(A:32b<35b>)
内訳
これから差し引かれた───────────────────────────────────────────────────
諸経費に 現行通貨で 320,000 d.n 穀物で 5,000ウィクル
内々訳
通常経費────────────────────────────────────────────────
現行通貨で 150,000 d.n 穀物で 5,000ウィクル
給付金───────────────
学生のために
50,000 d.n
|
年俸─────────────────
従僕達のために
40,000 d.n
|
生活費─────────────────
古参の奴隷(‘abīd)のために
20,000 d.n
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経費─────────────────
使者のための
20,000 d.n |
扶持─────────────────
10,000 d.n
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手当──────────────────
サイイド達のために 現金で 穀物で 10,000 d.n 5,000ウィクル
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内々訳の対
特別経費────────────────────────────────────────────────
170,000 d.n
ハージャ───────────────────────────
イマード・アッディーン 宮廷費担当官
126,000 d.n
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アミール───────────────────────────
アリー糧食担当官 宴会(shawlān)60のために
羊の価格 44,000 d.n
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(A:33a<36a>) 基本額の対
残余─────────────────────────────────────────────────────────────
と超過 説明されたように (Hinz:50)
解説(ḥikāyāt)
残余────────────────────────────
彼が返すべき 穀物で 25,000ウィクル
|
解説
超過────────────────────────────
彼が貸している 現金で 20,000 d.n
|
決定
それから(min dhālika)───────────────
超過の補填(‘iwaḍ)のため 20,000 d.n [1]ウィクルにつき 1
d.n すなわち 20,000ウィクル
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決定
そのために(bi-wajhi dhālika)─────────────
残余で述べられた穀物によって 20,000 d.n 全額
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最終的な残余(naṣṣ al-bāqī)61──────────
穀物で62 5,000ウィクル
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この計算書(muḥāsaba)は、次のようにも書かれる。
基本額の対
残余──────────────────────────────────────────────────────────────
と超過
解説の対(qarīna’-i ḥikāyāt)
残余─────────────────────────────
彼が返すべき 穀物 25,000ウィクル
(Hinz:51)
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解説の対
超過─────────────────────────────
彼が貸している 現金で 20,000 d.n
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額の確定(qarār-i wajh)
残余が執行された────────────────────────────────────────────────────
超過のために 20,000 d.n ウィクルにつき 1
d.n すなわち 穀物 20,000ウィクル (A:33b<36b>)
最終的な残余───────────────────────────────────────────────────────
穀物 5,000ウィクル
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34
校訂およびAでは節番号はないが、Mでは「第3節(bāb-i sīyum)」。本節のMの該当箇所はM:
42–48。残余と超過についての他の同時代の簿記術指南書の解説箇所は、Qānūn al-Sa‘āda: 10–11;
Sa‘ādat-nāma: 94–108; Jāmi‘ al-Ḥisāb: 9–13; Nafā’is al-Funūn:
I, 321–323。
35
bāqī:“[Steuer-]Rückstand, Restsoll”(Hinz, Indices: 15);“Restroll;
Rückstandsbetrag” (Nabipour 1973: 157)。
36
ziyāda:“[Steuer-]Überschuss, Resthaben des Steuereintreibers”(Hinz, Indices:
25);“Überschuss; zuviel einbezahlter Betrag”(Nabipour 1973: 163)。
37
Mの節題では「様々な状況での方法による(ba-ṭarīq-i awḍā‘)残余と超過」(M: 42)。
38
校訂では「収入(jam‘)と支出(kharj)」とあるが、Aでは「なんらかの収入と支出(jam‘ wa kharjī)」である。Mでは校訂と同じくjam‘ wa
kharj(M: 42)。
39
Aおよび校訂ではal-a‘āna ‘alā
Allāhだが、その意味は「神への助力を」となり、表現としておかしい。Allāhの前に‘ibādの語が欠落しているとも考えられる。Mではこの祈願句はない(M:
42)。
40
校訂およびAではmutawajjihāt-i mālī-yi Baṣraだが、Mでは「イスファハーンの諸税の(mutawajjihāt-i
Iṣfahān)」(M: 42)。
41
校訂およびAでは「内々訳の対(qarīna-yi
min-hā)」となっているが、文脈的に「内々訳」が正しい。この「通常経費」と対になる「特別経費」が「内々訳の対」である。
42 校訂ではAに基づきwilāyātと複数形になっているが、続く用例2の同箇所は単数形であり、Mでも同様である(M:
42)。
43
Sa‘ādat-nāmaでは、「これが正しい(ṣaḥḥa
dhālika)」は収支が一致した場合に用いられるとにされており、超過が出た場合は「その支出(maṣraf-hu、またはmaṣraf
dhālika)」と書くとされている(Sa‘ādat-nāma: 94, 96)。
44
校訂およびAではmutawajjihāt-i mālīだが、Mではmāl wa mutawajjihāt(M: 43)。
45
Mでは「〜の責任において」(M: 43)。
46
信徒の長フサインとはシーア派第3代イマーム・フサインのことであり、その殉教地とはカルバラーを指していると思われる。Falakīyaは、1年の総収支を示す総合帳簿の用例の州別歳入一覧において、イラク・アラブの項目に「信徒の長アリーの殉教地ナジャフ」「信徒の長フサインの殉教地カルバラー」を特記している(Hinz:
161)。
47 ḥawāshī-yi
sa‘īd:sa‘īdが「幸運な、幸福な」を意味する形容詞なのか、人名(Sa‘īd)なのか不明。Mではこの箇所の詳細説明はすべて省略されている。
48
garakyarāqchī(keräkyarāqcī):“Beschaffungsintendant”(Hinz, Indices:
17);“Beschaffungs-intendant(um einen Grad tiefer stehend in der Hofhierarchie
als der bökavül)”(TMEN: III, 595, Nr. 1632)。
49
bukā’ul(böge’ul):“Speisemeister”(Hinz, Indices: 15);“Vorkostet beim Chan; auch:
Heeresintendant”(TMEN: II, 301–307,
Nr.755)。ブカウルは、イル・ハン朝期からジャライル朝期のモンゴル遊牧官制の1つであり、イル・ハン朝期にはモンゴル軍の糧食調達・支給を担当していたと考えられる(本田
1991: 235–236)。ジャライル朝期のブカウル職の職務については、Dastūr al-Kātibの「軍のブカウル職(būkā’ulī-yi
lashkar)」任命文書の用例を参照(Dastūr al-Kātib: III, 53–57)。
50
Aおよび校訂では、「冒頭の内訳(min dhālika-yi
ṣadr)の対」となっているが、「超過」の項目は会計冒頭の「基本額」の項目と対であり、「冒頭の対」となるべきである。Sa‘ādat-nāmaは、「超過」「残余」を会計冒頭の対として同じ長さのマッドで書かれる項目名であるとしている(Sa‘ādat-nāma:
63)。
51
校訂ではAの識別点の位置をそのままにnar-īn mawjibとしているが、「この通り(bar-īn mawjib)」の誤りであろう。
52
アラビア語の文章のなかでこの語のみがsāl-i āyandaとペルシア語になっている。Mにはこの語はない(M: 44)。
53 校訂では「において(fī)」となっているが、A、Mともに「から(min)」と読むことができる(M:
44)。
54
Sa‘ādat-nāmaでは、「これから支出された(wuḍi‘a min dhālika)」や「これが支払われた(khurija
dhālika)」と書くとある(Sa‘ādat-nāma: 94)。
55
校訂およびAではmutawajjihāt-i mālīだが、Mではmāl wa mutawajjihāt(M: 44)。
56 ヒンツはこの日付は734
年ムハッラム月1日の誤りとしている(Hinz: 46, n. 2)。
57
Mでは、ここにAにない記述がある(M:
45–47)。帳簿上では残余が出ているが、それがすでになんらかの経費として支出されていると徴税吏が申告した場合の帳簿の4通りの記録方法の解説と用例であり、Sa‘ādat-nāmaにも同様の解説が存在する(Sa‘ādat-nāma:
96–104)。以下はその4通りの記録方法である。 [徴税吏が会計外の支出の存在を申告し、それが残余の額と一致する場合の書式](M:
45) 「このあと、もし徴税吏が訴えをせず(da‘wā
na-dārad)、[そして]会計が正しいなら、彼は残余を支払わねばならない。もし徴税吏に[会計に記載されていない支出の]訴えがあり、もし訴えの額が[会計上の残余と]一致していれば、「残余」と同じ長さで「これが正しかった」と書き、総額の箇所に「全額」の語を書く。次のようにである[用例略]」。
[徴税吏が会計外の支出の存在を申告し、それが残余の額を超過する場合の書式](M: 45–46) 「もし[徴税吏の]訴えが[残余額]より多ければ、「その報告(taqrīr-hu)」を「残余」と同じ長さで書き、超過の額がいくらかを「その報告」の下に、同じような書式で[書く]。次のようにである[用例略]」。
[徴税吏が会計外の支出の存在を申告し、それが残余の額より少ない場合の書式](M: 46) 「もし[徴税吏の]訴えが残余より少ないなら、次のことがよく知られている。「差し引き
(min dhālika)」を長く伸ばして書き、定められる訴えの額をその「差し引き」の総額の箇所に記録する。余ったものは、「最終的な差引額(min
dhālika al-naṣṣ)」の語を残余の「差し引き」と同じ長さで引き、残余を「最終的な差引額」の下に書く[用例略]」。
[最終的な残余から、さらに支出した場合の書式](M: 46–47) 「そのあとで、最終的な残余(naṣṣ-i
bāqī)から何か支出する場合は、「最終的な差引額」と同じ長さで(M: 47)「そしてそれから執行された(wa ujriya
min-hā)」の語を伸ばして書く。そしてしかるべきもの(支出)をその下に書く。さらにまた残ったものは、「それについて語るべきことがないものが残った(もう書くことのない最終的な残余額)」の言葉を長く伸ばして書き、残高を[以下に]示すように記載する[用例略]」。
58 校訂ではAに基づきmablagh-i
al-ziyāda kiとなっているが、Mではkiに相当する語はla-huであり(M: 47)、こちらの方が文脈に適合する。
59
校訂およびAではmutawajjihāt-i mālīだが、Mではmāl wa mutawajjihāt(M: 47)。
60
shawlān(šilän):『モンゴル秘史』にチンギス・ハンが食した「肉汁」または皇帝の「食膳」の意味で登場する(村上 1970–76: I,
256–257, III, 17, 48–49, 361, 364, 365; 栗林均・確精扎布 2001:
830)。ヒンツは「(貧民のための)給食([Armen-]Speisung)」(Hinz, Indices:
23)としているが、TMENは国家の宴会(Staatsbankett)、高位の人物の食事を意味するとしている (TMEN: I,
368–370, Nr. 246)。Falakīyaは他にも宮廷食糧貯蔵庫(ḥawījkhāna)が扱うナッツ、果物などの品物の1つとして「shawlānのためのイチジク」を挙げる(Hinz:
19)。Mではこの箇所は、「宴会のために」のみで「羊の価格」の語句はない(M: 48)。
61 校訂はnaḍḍ
al-bāqīであるが、Aの該当箇所ではḍの識別点はなくṣとも読みうる。Sa‘ādat-nāmaではnaṣṣ al-bāqīとなっている(Sa‘ādat-nāma:
95–96)。naṣṣは「決定版」を意味することから、すべての決済が終了したあとの最終的な残額を意味すると考えられる。
62
校訂では「彼に対して(‘alay-hi)」となっているが、Aの該当語は‘LHと読め、穀物(ghalla)と読むことができる。Mではal-GhLH(al-ghalla)である(M:
48)。校訂テキストで続く同用例の別の書式の該当箇所はghallaとなっているため(Hinz:
51)、ここでも「彼に対して」ではなく「穀物」で解釈すべきであろう。
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