イスラーム圏におけるイラン式簿記術の展開:
オスマン朝治下において作成された帳簿群を中心として
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研究の目的 |
歴史学において、社会経済史や財政史など数量的な研究を行なうためには、史料として帳簿を利用することが必須である。しかし今般のイスラーム史研究にあって、テキスト主体の文書に関する知識はある程度蓄積されているものの、帳簿の史資料学的研究は国際的に見ても未開拓と言ってよい。とりわけ喫緊の課題は、帳簿の理解に不可欠な簿記術に関する研究である。
イスラーム圏の帳簿史料の技術的原理を解明する手がかりとなるのが、14世紀のモンゴル支配下のイランで確立されたと考えられるイラン式簿記術である。歴史的イラン地域では、イスラーム受容以降、宗教的・学問的権威言語であるアラビア語による官僚技術の影響を受け、ペルシア語の術語と、アラビア語の数詞の崩し書きから生まれた独特の数字で特徴づけられる簿記術が発達した。この簿記術は、東はムスリム諸王朝支配下のインド、西はオスマン朝を通じてアナトリア、バルカン、さらにはアラブ地域においても在来の簿記に取って替わることとなった。本研究は主として豊富な実例が伝存するオスマン朝の帳簿群に依拠しつつ、近代に複式簿記に駆逐されるまでイスラーム圏でスタンダードであったイラン式簿記術の諸原理を体系的に解明することにより、帳簿史料の性格と内容を正しく把握し、数量的研究のための基盤を提供することを目的とするものである。
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組織およびメンバー |
- 申請者
髙松洋一(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・准教授)
- 研究構成員(2012年4月1日現在)
清水保尚(日本大学文理学部非常勤講師)
渡部良子(東京大学文学部非常勤講師)
齋藤久美子(慶応義塾大学言語文化研究所非常勤講師)
阿部尚史(日本学術振興会特別研究員/日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所)
熊倉和歌子(日本学術振興会特別研究員/財団法人東洋文庫)
- 研究協力者(五十音順)
岩本佳子(京都大学大学院文学研究科博士課程)
江川ひかり(明治大学文学部教授)
今野毅(北海学園大学・札幌学院大学非常勤講師)
佐治奈通子(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)
ビルギン・アイドゥン(イスタンブル・メデニイェト大学文学部歴史学科長)
オクタイ・オゼル(アンカラ・ビルケント大学)
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研究会の成果 |
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研究成果報告書 |
- 2013年3月14日 定例研究会の成果として訳註本『簿記術に関するファラキーヤの論説 / マーザンダラーニー著(14世紀)』xxix,111p.を出版しました。
- 2012年1月10日 公募研究成果報告書『イラン式簿記術の発展と展開 : イラン、マムルーク朝、オスマン朝下で作成された理論書と帳簿』のPDF版および正誤表を公開しました。PDF版は正誤表をもとに修正が施されています。
- 2011年3月22日 公募研究成果報告書『イラン式簿記術の発展と展開 : イラン、マムルーク朝、オスマン朝下で作成された理論書と帳簿』を出版しました。
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図書の利用について |
- 2013年2月25日 公募研究で購入した図書のリスト(タイトル順)(PDF版)を公開しました。図書の利用についてはあらかじめメール(info☆tbias.jp、☆を@にかえてお送りください)にてご連絡をお願いします。
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活動予定 |
トルコ 2012/8
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